事業再構築補助金の不当行為
会計検査院が先日発表した「令和5年度決算検査報告の概要」
(令和6年11月公表)245ページ
事業再構築補助金の不当行為▼
中小企業等事業再構築促進補助金(以下「事業再構築補助金」という。)は、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、事業・業種・業態の転換、事業再編等の事業を実施する中小企業者等に対して、事業に要する経費の一部について、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)が補助するものである。
機構は、中小企業庁から補助金の交付を受けて基金を造成し(令和5年3月時点の基金造成額2兆4408億余円)、基金を取り崩して事業再構築補助金を交付している。また、機構は、経済産業省が制定した中小企業等事業再構築促進補助金実施要領(20210315財中第1号)等に基づき、中小企業者等が事業再構築補助金の交付を受けて実施する事業に係る確定検査等の事務を、中小企業庁が公募により選定した株式会社パソナ(以下「受託事業者」という。)に委託している。そして、受託事業者は、機構の指導及び監督の下で、「補助事業の手引き」等を制定するなどした上で事務を行って いる。
「補助事業の手引き」等によれば、補助の対象となる経費は、補助事業実施期間に納品、検収及び支払までを完了したものとされている。また、クラウドサービス利用費のうち月々の利用料につ いては、補助事業実施期間に要する経費に限り補助の対象とすることができることとされている。
本院が、機構、受託事業者及び113事業主体において会計実地検査を行ったところ、1事業主体に おいて次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
株式会社エージェーシー(以下「会社」という。)は、コロナ禍に対応した新たな就職支援サービスへの挑戦としての再就職支援事業を行うために、令和3年10月から4年6月までを補助事業実施期間として、面接者カルテ作成メニューの導入及びクラウドサービスの利用を内容とするWEB面接システムの構築、ポータルサイトの改良等を事業費44,000,000円(補助対象事業費40,000,000円)で実施していた。そして、会社は、3年9月に成果物の納品を受け、4年6月に本件事業を完了したと(注)する実績報告書等を同年7月に受託事業者に提出して、同年10月に、事業再構築補助金26,666,666円 の交付を受けていた。
(注)本件事業に適用される中小企業等事業再構築促進補助金交付規程(規程令3第13号)等によれば、補助事業実施期間は、原則として交付決定日から12か月以内等とされているが、機構が認めたものに限り、令和3年2月15日から交付決定日の前日までの間に発注等を行った経費であっても補助の対象とすることができることとされている。そして、会社は、3年2月15日から交付決定日の前日である同年10月11日までの期間に発注等を行った経費を補助の対象とすることについての承認を受けている。
しかし、会社が面接者カルテ作成メニュー及び改良されたポータルサイトの納品を受けたのは、実際には補助事業完了日の4年6月を1年以上経過した5年12月及び6年3月であったにもかかわらず、会社はこれらの成果物について事実と異なる納品日が記載された納品書等を受託事業者に提出して、本件事業を4年6月までに完了したとする実績報告を行っていた。また、会社が補助対象事業費に計上していたクラウドサービスの月々の利用料には、補助事業実施期間に要する経費ではない4年7月以降の54か月分が含まれていた。
したがって、面接者カルテ作成メニューの導入及びポータルサイトの改良に係る経費21,712,000円並びにクラウドサービスの月々の利用料54か月分に係る経費1,069,200円の計22,781,200円は補助の対象とは認められず、これに係る機構の補助金相当額15,187,466円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、会社において補助事業の適正な執行に対する認識が著しく欠けていたこと、受託事業者において会社に対する指導が十分でなかったこと、機構において受託事業者に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。