空調設備の基礎知識2
前回、空調設備は対象と目的によって、保健用空調設備と産業用空調設備に分類されることを示しました。
今回は、空調設備の設置方法や吹き出し方法の違いによる分類について説明します。
また、空調するエリアを区分けする代表的なゾーニング手法や、
それぞれの空調方式における特徴などについても解説します。
空調対象となるエリアを区分けすることをゾーニングといいます。
代表的なゾーニングとして、1階・2階に店舗が入り、3階以上はオフィスとなるような階別(用途別)
のゾーニングや、部屋の中央付近と外壁付近に区分けする方位別のゾーニングがあります。
方位別ゾーニングの場合、外壁や窓から5m程度までの空間をペリメータゾーン、
その室内側の空間をインテリアゾーンと呼びます(図1)。
ペリメータゾーンは室外に近いため、外気の影響を大きく受けます。
夏は日射熱などによって、冬は熱損失によって、インテリアゾーンよりも暑くなったり寒くなったりするため、
インテリアゾーンとペリメータゾーンを同じ空調機で同時に冷暖房することが難しい場合が生じます。
空調の設計の際には、このインテリアゾーンとペリメータゾーンをどのように空調するか検討する必要があります。
その他、空調設備は、機器の設置方法によって大きく2種類に分けられます。
1つは、中央空調(セントラル)方式といい、大型の空調機や熱源となる冷凍機、
ボイラーなどを中央機械室に設置し、空調された空気をダクト経由で一括して各室に送る方式です。
もう1つは、個別空調方式といい、各室や空調対象エリアごとに小型の空調機を設置し、
個別制御性を高めた方式です。以下から中央空調方式と個別空調方式の説明をします。
中央空調方式は、中央機械室に大型の空調機などをまとめて設置します。
機械室は通常、大きな機器の搬入出がしやすいように、1階や地下1階などに設けられることが多くなります。
地下に機械室を設けた場合は、ドライエリアと呼ばれる空間を外壁の横に設けると、
修理や交換のために屋外からアクセスしやすくなります
中央空調方式の代表的なシステムとして、単一ダクト方式があります。
単一ダクト方式とは、空調機で熱を与えて温度を高くした空気や、
熱を除去して温度を低くした空気をダクト経由で一括して各室に送り、各室からの空気をまとめて空調機に返す方式です。
ダクトとは、空調設備の一つで、気体を運ぶ管のことをいいます。
中央空調方式では、外気を空調機にまとめて取り込み、その外気を各室に送風するため、冷暖房と
換気の両方を同時に行うことができます。単一ダクト方式には、定風量単一ダクト方式と変風量単一ダクト方式があります。
定風量単一ダクト方式は、CAV(Constant Air Volume)方式ともいいます。
空調機から各室へ同じ風量・温湿度の空気を送ります。
基本的に、部屋ごとの温湿度は設定できません。また、風量が固定であるため、
冷房を強くしたい時は空調機で空気温度を低くする必要があります。
この方式は、稼働する機器が比較的少ないためにメンテナンスが容易なことと、
各室に送られる風量に一定の外気が含まれているため、
室内の空気質が良好に保たれるというメリットがあります。
一方、熱負荷が小さく、それほど冷暖房を必要としていない部屋にも
同風量の空気を送るため、ファンの無駄な送風エネルギーが発生し
てしまうというデメリットもあります。
変風量単一ダクト方式は、VAV(Variable Air Volume)方式ともいいます。
基本的な構成は定風量単一ダクト方式と同じでありながら、
各室や各階へ空気を送るダクトの途中に変風量(VAV)ユニットと呼ばれる機器を取り付けることで、
空気の風量を変更することが可能です。
これにより、熱負荷が大きく冷暖房をより必要とする部屋には多くの空気を送り、
冷暖房をそれほど必要としない部屋へは少しの空気を送ることで、
ファンの無駄な送風エネルギーを削減することができます。
ただし、稼働機器が増加する分、メンテナンスの手間やコストがかかります。
また、風量が減少した際に送風空気に含まれる外気が減少してしまうと、部屋の空気質が悪化する可能性があります。
このため、外気風量がある一定値を下回らないように機器の設定・運用を行うことが必要です。
オフィスビル内の大きな建物では、部屋のインテリアゾーンでは、
このような単一ダクト方式で冷暖房と換気を行い、ペリメータゾーンで
は、天井や床に小型の空調機を設置して局所的に冷暖房を行うといったシステムがよく見られます