空調設備の基礎知識4
水蒸気を吸収して稀溶液となった吸収液は、再生器に移動します。吸
収液である臭化リチウムは、水に溶けた状態では沸点が水よりもかな
り高くなるため、再生器でボイラなどによって加熱されることで、水の
みが蒸発します。水蒸気と分離して濃溶液となった吸収液は吸収器に
還(かえ)り、再び水蒸気の吸収を行います。再生器で水蒸気となった
冷媒は、凝縮器において、圧縮式冷凍機と同様に冷却塔から流れてき
た冷却水によって冷却され、液体の水に変化します。温度が上がった
冷却水は冷却塔で熱を大気に放出し、水となった冷媒は再び蒸発器
において冷水から熱を奪う作用を起こします。吸収式冷凍機では圧縮
機を用いないため、圧縮式冷凍機に比べて音や振動が小さく、電力消
費量も少なくなる傾向があります。
冷却塔は、クーリングタワーと呼ばれ、冷却水を冷やすために使われ
ます。代表的な中央空調方式の場合、冷房時には、室内へ侵入した熱
は空気によって空調機まで運ばれ、空調機から冷凍機までは冷水に
よって運ばれます。この熱は、最終的に冷却水によって冷凍機から冷却
塔まで運ばれてきます。冷却塔は、この最後のプロセスに用いる機器
です。夏、熱く火照った顔に扇風機で風を当てると、熱は空気に移動す
るため、顔の表面温度が下がって涼しく感じます。これと同様に、熱を
含んで温度が上がった冷却水をシート状の充填層に散布し、そこに
ファンで屋外の空気を当てることで、冷却水を冷やします。熱は空気へ
と伝わり、屋外に放出されます。温度が下がった冷却水は再び冷凍機
へ向かい、冷媒から熱を奪います。冷却塔は、開放式と密閉式に分類さ
れます。
開放式冷却塔は、水を充填層に散布することで、空気と直接接触させ
る方式です。冷却効率がよく、装置自体を小さくすることができる一方、
冷却水が直接外気と接触するため、大気中の浮遊物や有害物質が冷
却水に入る可能性があります。浮遊物や有害物質を取り込むと冷却水
は濃縮し、管を腐食させたり詰まらせたりする原因にもなるので、注意
が必要です。
密閉式冷却塔は、密閉された管の中に冷却水を通し、冷却用の散布水
と空気で冷やす方式です。冷却水が直接外気に触れないため、開放式
に比べて衛生的であるといえます。
冷却塔に流れてくる冷却水の温度は、レジオネラ属菌の繁殖に最適な
温度域となっているため、開放式・密閉式に限らず、冷却塔は定期的に
清掃を行い、衛生管理を徹底する必要があります。